2022年は鹿島アントラーズの歴史に残る厳しいシーズンとなりました。
リーグ戦の序盤こそレネ・ヴァイラー監督の求める縦に速いサッカーがハマり首位に立ちます。
しかし徐々に相手に研究され勝ち切れない試合が出始めました。
それでも上位陣も勝ち点が伸び悩んでいたため優勝争いに踏みとどまることができていました。
その中でチームの骨格を揺るがす大きな出来事がありました。
上田綺世のベルギー移籍です。
すると極度の得点力不足に陥ります。
国内では屈指のストライカーであり上田の存在の大きさをまざまざと見せつけられました。
その後、チームの成績は下降し続け監督交代も行われます。
しかしながら岩政大樹監督も立て直しはできませんでした。
特に上位対決ではことごとく敗戦しチームの成熟度の差が出てしまった1年です。
どうにか順位は4位で終わることはできました。
ただ勝ち点や得点数、失点数とどれもクラブワーストに近い数字が並んでしまいました。
序盤戦で首位になっていたことを考えれば、後半戦がどれほど不振であったかがわかります。
今季はここからリーグ優勝を狙うことになります。
そこで今回は2023年の鹿島アントラーズの展望を考察したいと思います。
<①戦力>
まず昨季は開幕前からCBの駒不足が不安視されていました。
それまでのレギュラーであった犬飼智也と町田浩樹が2人とも移籍をしてしまったからです。
キム・ミンテの補強はありましたが、現有戦力の成長に期待した形です。
関川郁万は高卒4年目でレギュラーになったのは立派でした。
しかしまだリーダーになる選手ではありません。
三竿健斗をボランチからコンバートしましたが良さを活かし切れませんでした。
結局42失点と歴代5番目に多い数字となってしまいました。
近年のJリーグでは1試合平均失点が1を切るクラブがほぼ優勝しています。
それほど守備の重要度は増しています。
そこで今季は昌子源、植田直通と2人のタイトルを知る選手を帰還させました。
彼らにはプレー面以外でもいい影響はあります。
しっかりとクラブの伝統を継承してほしいです。
期待通りの働きを見せてくれれば守備は大きく改善すると思われます。
そしてシーズン途中に課題となった得点力不足です。
なかなか得点の取れるCFタイプは見当たりません。
特に上田綺世ほどの選手はおらず、外国籍選手であってもまず獲得はできないです。
そこで目を付けたのが知念慶です。
高い実力はありますが川崎フロンターレでは絶対的なエースではありませんでした。
環境が変わり化ける可能性は大いにあります。
また垣田裕暉と染野唯月もレンタルバックさせました。
これで鈴木優磨を少し下げて攻撃の組み立てに専念させることができます。
1人では上田には敵わないかもしれませんが3人を併用できれば得点力不足解消に繋がりそうです。
さらにエレケと師岡柊生という異なるタイプのFWも控えており様々なバリエーションが考えられます。
それぞれが特徴を出し魅惑の攻撃陣を形成してほしいです。
<②監督>
昨季後半から引き続き岩政大樹監督が指揮を執ります。
決して岩政監督になってから成績が向上したわけではありません。
それでもフロントは継続路線を選びました。
これまでのクラブの伝統を継承していこうという意志を感じます。
そのため昌子源、植田直通を復帰させ、レンタル移籍をしていた垣田裕暉、染野唯月、須藤直輝を戻しました。
新しいチャレンジをするなら他の選手を獲得したはずです。
監督からの要望があったことでしょう。
今年はスタートから自分のチームが作れるのでフォーメーションから選手選考まで楽しみです。
岩政監督は今の時代に強豪クラブを作り上げるには明確なチームのスタイルが必要だと話していました。
ただそのようなチーム作りには時間がかかることも認めています。
特に鹿島は勝利が義務付けられるクラブです。
勝利から遠ざかれば監督は解任されてしまう恐れがあります。
ある程度結果を出しながらもチームの骨格を作ることはできるのでしょうか。
岩政監督の手腕に注目です。
<③フロント>
昨季はフロントの迷走ぶりが気になりました。
チームの長期指針が見えてきませんでした。
まず昨シーズン開始前に強化責任者が鈴木満から吉岡宗重に変更になります。
鈴木満は1992年にコーチに就任し、2000年からは強化部長として長く鹿島に関わってきた人物です。
2021年のクラブ創設30周年にタイトルを獲れなかったことで退任することになりました。
そして大きな変革が起こります。
これまで鹿島は監督、スタッフ、選手と日本人、韓国人を除くと全てブラジル人で構成されてきました。
ジーコに始まり大事にされてきた伝統です。
そのブラジル路線から監督はスイス人のレネ・ヴァイラーになり、コーチにもセルビア人のドラガン・ムルジャ、ドイツ人のマヌエル・クレクラーと欧州の風が吹き込まれます。
これでうまくいけば問題はなかったのですが成績の下降に伴い指導方針にもズレが生じます。
詳細まで外部にはわかりませんが、結果的に関係悪化は修復できずわずか5ヵ月で変革は頓挫することになりました。
そしてOBでコーチであった岩政大樹を監督に昇格させるという場当たり的な対応で凌いでいます。
その前後でも染野のレンタル移籍、ファン・アラーノの退団、エレケの加入、レネ監督の退任と一貫性が感じられませんでした。
最善の策から望む結果が出ないことももちろんあります。
むしろその方が多いかもしれません。
そのため何が悪かったのか検証するためにも長期的視野を持って長いスパンでクラブ作りをしてほしいです。
<④運>
運と言ってしまえば元も子もない話です。
しかし運も大事な要素です。
タイトル獲得は他者の絡む相対的なものになります。
いくら鹿島がいいチームを作り成績を残しても、それを超えてくるチームが出てきてしまえばタイトルは獲れません。
リーグ優勝は長期戦なのでカップ戦より実力が反映されます。
それでもライバルクラブの主力の怪我や出場停止、海外移籍による戦力ダウン、下位クラブへの取りこぼしなど自チームでは関与できないことが少なくありません。
また今季もまだコロナの心配が付いて回る1年になりそうです。
鹿島が1ステージ制でリーグ優勝をした4回は全て混戦であり、最終節で決着が付いています。
今季も紙一重でタイトルを獲るか、タイトルを逃すかになるかもしれません。
そのためにも日々の練習から全力で取り組み見えない力を取り込んでいきたいです。
以上4点から考察してみました。
そして1月20日に今シーズンの日程が発表されています。
開幕戦が京都サンガF.C.で第2節が川崎フロンターレとなりました。
まずはスタートダッシュが肝心です。
京都は昨季16位でJ1参入プレーオフに回っており、優勝する上で必ず勝たなければなりません。
そして次節のホーム開幕戦は苦手な川崎です。
2019年から5年間で第2節で川崎と4度目の対戦となっています。
これまでここで勝てないことが尾を引いて鹿島の調子を狂わせてきました。
今季は勝利し上昇気流に乗りたいです。
また第8節までに強豪クラブや苦手な相手が固まっています。
最初の8試合をどう乗り切るかがリーグ優勝できるかの鍵となると思います。
2017年に僅差で川崎フロンターレにリーグ優勝を攫われてから6年が経ちました。
川崎はその優勝からJリーグの王者に君臨し6冠も獲得しています。
またその間に横浜F・マリノスもスタイルを確立しリーグ優勝を2回も達成しています。
鹿島は完全に差を付けられ悔しい日々を過ごしてきました。
もうこれ以上差を広げられるわけにはいきません。
今季はいよいよ反撃をする番です。
川崎、マリノスにも劣らないいいメンバーは揃っています。
後は自信だけです。
その自信を得るにはタイトル獲得しかありません。
タイトルを獲得し鹿島が常勝軍団復活の狼煙を上げるきっかけとなる1年にしてもらいたいです。
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